華やかな色を求めて〜越前塗の旅〜

華やかな色を求めて〜越前塗の旅〜

「京藤」(きょうふじ)と「藤紫」(ふじむらさき)。これは何の名前かお分かりですか?まるで、紫式部の光源氏に出てくるような華やかな女性の名前のようです。どちらも日本古来から伝わる和名で紫の種類です。紫は、平安時代の頃より、高貴で華やかな色と言われてきました。また、近年では、天然石アメジストの色も紫で、心の平穏、安定をもたらす優しい色だとされています。

今回は、オリジナルの越前塗の色が、この2つの色になったお話です。

「京藤」の器たちは、約2年くらい前に作られたオリジナル商品です。淡くて深い透け感のあるピンクの色が存在感を引き立てます。お店で陳列すると、物珍しさに手に取るお客様もたくさんいらっしゃいます。


2年前に「京藤」を作った様子。色を決めては吹きつけて、拭いては吹きつけ。


遂に深い淡いピンクに艶感のある「京藤」が完成。

そして、今年、この「京藤」のアイテムを増やすと同時に、もう一つのオリジナルの色を制作することに。「京藤」を作った時、この色でとお願いしていたのですが、色を調色する段階になって、遠隔で(ディスプレイによる色の違いや照明による色の違い)は、難しいということになり、急遽、その日の午後から新幹線に飛び乗ったのを覚えています。

もう一つの色は、京藤と対する色、華やかだけど、男性でも使えるような、対になる色を。グレイがかったパープルをいつもお願いしているネイリストさんにお願いして(前回の京藤も同様に爪に塗ってもらったものを見本にしました。「爪の色が見本」は初だったそう。。)、私の爪に塗ってもらいました。新しい色の見本となるように、グラデーションで透明感も出しつつ、上品で華やかなパープルを。パープルだけではなく、深みの出るようなグレイやピンクなども足していただきました。


この色でと見本となるネイル色、こちらも苦労して色を出してもらいました。

再び、曽明漆器店の曽明さんと塗り師の竹内さんの工房へ。ほぼ2年ぶりの再会に竹内さんは、苦笑いを浮かべながらも「きてくれただけで嬉しいわ。また、爪か??どんな色??」と招き入れてくれました。ということで、新しい色づくりが始まりました。


ちょっとだけ色を足すことで、ガラッと色が変わってしまうことも。

赤、青、ピンクをほんのちょっとずつ入れて、私と曽明さんとで混ぜながら、木の端切れに塗ってみて、色を足していきます。色が決まったとしても、木地に塗ってみると、表情が変わって見えたり、色が出てこなかったり。何度も塗っては拭いて、調色して、塗っては拭いてと。何度も何度も繰り返しできた色。それが「藤紫」です。みんなが満足する色が出来上がった時の、あの一度めの感覚を思い出しました。


こちら京藤の新しい小皿

新色の「藤紫」グレイが買ったパープルが美しい。


疲れ切った達成感の中、曽明漆器 の曽明さん、塗り師の竹内さん、そして私

曽明漆器 さんのある鯖江市河和田町は、越前漆器に携わるお店や工房が多く集まっているものづくりの街です。鯖江市や越前市の中心からは少し距離がありますが、いくつか工房の見学や工房の直営店があったりと遠くから足を運んで来られる方もいらっしゃるそうです。

曽明漆器 さんもそういう方達のために、最近ギャラリーを作られたそうです。初めて通していただいたお部屋には、荘厳な美しい今昔の漆器たちが揃い、漆の艶やかな佇まいや蒔絵の繊細な美しさにしばし時を忘れて魅入ってしまうほどでした。言葉を連ねるよりも、実際に見て、この歴史の深さ、真剣さをたくさんの方々に感じていただけたらと思います。


曽明漆器 さんギャラリー。今昔の越前漆器がずらり。


越前漆器の特徴、豪華な蒔絵は繊細なのに力強い美しさ

今回の「京藤」「藤紫」は漆の器ではございませんが、漆の街で、ものづくりのプロ達の手を借り、こだわり抜いて作った器です。可能性を感じながら、ものづくりに取り組めるこの機会を大切に、お客様にも巡り会えた器として感じていただけたら、手に取っていただけたらと願います。


店頭に並ぶ「京藤」と「藤紫」華やかな色が目に止まります。

【曽明漆器店】
福井県鯖江市西袋町67-13-3
TEL:   0778-65-0071​ FAX:  0778-65-0098

営業時間: 10時~18時 
定休日:土日
※ギャラリー見学は、事前連絡をお願いします!

ルート1:JR越前たけふ駅から車にて30分
ルート2:北陸自動車道鯖江ICから車で15分
ルート3:ハピライン鯖江駅から車で20分

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五十嵐郁子

1975年生。東京在住。エーデパディレクター。福井県越前市生まれ。日本女子大学卒。大学生の2人の娘の母。東京福井県人会理事。

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越前塗オリジナル小皿


越前塗オリジナル木製椀(京藤)


越前塗オリジナルティースプーン

IGARASHIIKUKO