ヒトモノvol.3「a.depa キービジュアル」
「その人」が必要としている、欲しいものをデザインで形にしたい。
エーデパのキービジュアルを担当してくださっているデザイナーaiMIKIさん。今年10月に世界で最も権威のあるパッケージデザインの国際コンペティション「ペントアワード2022」で、デザインを手掛けたボードゲーム「ZEN(ゼン)タイル」が世界の2000あまりの参加作品の中から公式栄誉賞(上位6番目)に輝きました。aiMIKIさんにその受賞について、デザインに対する考え方についてお聞きしました。
「受賞はデザイナー冥利につきる本当に嬉しいものでした。「ZEN(ゼン)タイル」の内容を考えた川口洋一郎さん(越前市在住)はボードゲーム界では世界的にも有名で、このゲームも海外販売を視野に入れてデザインを考えました。禅寺にいる時のような凛とした、シンプルな美しさをスタイリッシュに表現したくてタイトルの書体まですべてオリジナルで作りました」とaiMIKIさん。
イギリス・ロンドンで開催された「ペントアワード2022」授賞式での世界のトップデザイナーたちとのディスカッションは、とても刺激的だったとか。
「パッケージデザインの脱プラスチックは、世界ではもはや当たり前の時流となっています。どうすれば自分たちのパッケージデザインが、環境にやさしく、人々の意識を高めることができるのかという事を、デザイナーたちが真剣にディスカッションしていました」
下書きなしで、迷いなく線が描ける理由は、ニューヨーク時代に培った力。
ニューヨークの美術大学を卒業後、そのままテキスタイルデザイン事務所に勤務、2006年に福井に帰国したaiMIKIさん。帰国後もブランディング、イラスト、テキスタイルデザイン、グラフィックデザインなど幅広く活躍されています。その中でも圧巻なのが、壁や大きなキャンバスに下書きなしで描くイラストです。エーデパのキービジュアルをコンクリートの柱に描いていただいたときも下書きはなく、迷いなく筆を走らせていました。全体の構図は頭の中で出来上がっているそうですが、なぜそのような事が可能なのでしょうか。
「卒業したての外国人がビザ付で仕事に就くのは大変で、デザイン事務所に勤務できるだけでも凄くありがたい状況でした。それだけに過酷な労働条件で、特殊な環境でしたね。質はもちろんですが、時間にも追われていて、ボスが席の後ろでカップを手にカラカラ鳴らしながら『Ai fast!fast!』みたいな感じで。迷って何度も直す時間は許されなくて、とにかく1回でデザインを描かないといけなかったんですね。労働ビザで働いていた私にとって、仕事がなくなることは、即帰国を意味します。だから、必死でしたね。その頃の経験が生きていると思います」。
エーデパのキービジュアルデザインはその思いにワクワクした。
「エーデパさんのお話を頂いたとき、私自身が地元の産業をデザインで発信していきたいと思っていたので共感できるところが多く、本当に嬉しかったです。デザインの力で素晴らしい伝統工芸を世界に発信していきたいと、とてもワクワクしたのを覚えています」。
キービジュアルを制作にあたってエーデパからお願いしたのは、7つの伝統工芸と(越前焼、和紙、漆器、箪笥、打刃物、若狭塗、若狭めのう)、2つの産業(めがね、繊維)、そして越前市の菊と川(水の流れ)を入れること。
「伝統工芸というと和風なイメージになりがちですが、おしゃれでモダンな雰囲気にしたかったので漆器や箪笥など伝統工芸を線画の軽いタッチで描き、色使いや線と面の部分をどうコンポジション(構成)するかを考えました」
「使ってもらえば、食べてもらえば分かります!」ではなく、ジャケ買いしたくなるようなパッケージデザインに。
パッケージデザインは、あまたある商品の中からまずは、手に取ってもらえることが大切だとaiMIKIさん。「どんなに良いものでも、手に取ってもらえないと質に感動してもらえるチャンスも逃してしまいます。パッケージは、その物の質や価値を一瞬で伝える役割を果たしていると思います」
自分色を出すのではなく、「その人」「その物」が必要としているものを作り、「人」や「物」という輝く原石をブラッシュアップし、その価値をインパクトのあるデザインで表現するaiMIKIさん。
今後、エーデパのキービジュアルを使った展開では、現在の赤、黄色の他、紺色などのカラーバリエーションを増やしたり、巾着袋や、マスキングテープ、そして「かわいいクラフトテープが貼られた段ボール箱って開けたくなりませんか?」とaiMIKIさんらしい視点のクラフトテープの提案も。
「思わず手に取りたくなる」。エーデパでは、キービジュアルを使ったそんなオリジナルアイテム開発をaiMIKIさんと続けていきたいと考えています。
aiMIKIさんにパッケージデザインを担当して頂いたエーデパオリジナル「羽二重餅」は人気商品。偶然にもクリスマスにもぴったりの色合い。
aiMIKIさんがデザインした「ZEN(ゼン)タイル」は、ゲームを通じて自分の気持ちを自然と話ながらコミュケーションができる優れもの。三木さん自身も常に持ち歩いているそう。取材をしながら「ZEN(ゼン)タイル」を体験してみると、三木さんとの距離感が自然と近くに。
aiMIKI(三木あい)
越前市出身・在住。パーソンズ・スクール・オブ・デザイン美術大学コミュニケーションデザイン学科、イラストレーション学科卒業。卒業後5年間、New Yorkでテキスタイルデザイナーとして勤務。 GAP, Carter’s, OLDNAVY, Victoria’s Secret, TopShop, AnnTaylor など数々のアパレル、雑貨ブランドのテキスタイルデザインを制作。2006年に越前市に帰福。以来、ブランディング、ロゴデザイン、イラストレーション、テキスタイルデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザインのすべてができるクリエイターとして強みを発揮。ボードゲームパッケージデザインやマスクのブランディングから、介護施設の壁画デザインまで幅広く活躍中。