作家さんと対談 株式会社曽明漆器店 曽明富代さん、晴奈さん
今回は新しい商品を積極的に開発している、株式会社曽明漆器店 曽明富代さん・晴奈さんと弊社・五十嵐社長の対談をお届けします。
「青色は食品にタブー」の概念にとらわれず、青色の木製食器「KyutarouBlue」を開発。
五十嵐社長(以下五十嵐) / 曽明漆器店さんと言えば、ブルー食器のイメージがありますが、どのような経緯で生まれたのですか。商品開発の秘話など教えて頂けますか?
曽明晴奈さん(以下 曽明(晴)) / もともとブルーって食品と相性が悪いとか、食欲減退とか言われていて、あまり塗り物として青色を使う人はいなかったんですね。でも、陶器などにはよく青色が使われていたので、きっと木にも合うのではないかなという感覚がありました。青色の色目と同時に、木の温かみというのも両立したくて、半透明な青色と木目と両方が楽しめるように「KyutarouBlue」を開発しました。
五十嵐社長(以下五十嵐)/ 木目も楽しめるように、ですね。青でも色も様々で透明感もいいですよね。
曽明富代さん(以下 曽明(富)) / 全て同じ塗料を使っているのですが、濃さで色の調整をしています。お天気とかでも変わることがあって、全く同じ色に仕上がることは滅多になくて、それも手作りの「味わい」だと思っています。
曽明(晴) / 青という色は、職人さんも最初びっくりされていましたね。
五十嵐 / 「青」という発想が凄いですよね。そういった色や形を発想されるのは、昔からの伝統的な漆器の形を変えていこうと思っていらっしゃったからですか?
曽明(富) / そうですね。感覚的にこういった色が必要とされているとか、他の器にも合うんじゃないかなと思いがありまして、最初に作ったのがビターカラー木彩椀なんです。そのカラーコーディネートから青の評判が良かったので、そこから色々な展開が始まりました。
2020年 第10回福井県優良観光土産品推奨審査会において
ビターカラーズ木彩椀が「新商品部門優秀賞」を受賞
五十嵐 / 今も新しい商品開発をされていらっしゃるんですよね。
曽明(富) / はい。仁愛大学のコミュニケーション学科の吉村ゼミの6名の方がデザイン・ウェブ活用の研究・開発をされていてその一環で、その中のひとりの方が漆器のストロー提案してくださいました。中をくり抜いているのではなくて、実は、生地二つのパーツを組み合わせて出来がっているんです。
五十嵐 / 仁愛大学さんとの共同開発なのですね。ストローって斬新ですよね。
曽明(富) / そうですね。私たちも生地ができるかどうか先入観があって、記事ができるどうかが最初のポイントでしたね。商品名はSq(すく)と言いまして、漆器久太郎のSとQ、ストローが四角いのでスクエアを掛け合あわせてくださって、ネーミング、ロゴの制作、ポストカーカードも全て学生さんが作ってくださいました。
曽明(晴) / 他にも自分で漆を塗るセットなども作りました。一度、漆を塗って拭き上げる体験ができるキットです。2年前のクラウドファンディングで企画を作ろうと思ったときに、コロナが出始めてみんなが出かけられない時期だったので、拭き漆という性格上、おうちで楽しんで頂けるように改良できないかな思い、その発想が重なって商品が出来上りました。
五十嵐 / 商品開発がなかなか大変な中で、なぜ実現できるのでしょうか。アイディアがあっても実行力が必要ですし、すごく行動力がありますね。
曽明(富)/ アイディアを出すのが好きなこともありますが、Sqは仁愛大学の学生さんの力をお借りしていますし、ブルーシリーズは、娘の疑問から出発していますので。
拭き漆のグレーブルー木製漆器キットはこちら
お互いの感性を認め合い、
言いたいことも言える関係。
五十嵐 / でも母娘で一緒にパターンもなかなか珍しいですし、すごくいい関係で仕事をしてらっしゃいますよね。
曽明(富) / 娘なので、言いたいことが言える関係ですね。ぶつかったりする事もありますけれど(笑)。この「KyutarouBlue」の制作にもあるように、私には持っていない感性を持っているという事もありますし、実務的なところではウェブが詳しく、凄く助かっています。頼りにしていますね。
曽明(晴) / そうですね。私も言いたいことが言えますね(笑)。私から見ても、私にはない感性でモノづくりをするので、そういった考え方もあるのかと勉強にもなりますし、自分ができないことは、頼りっきりになっているので、いないと困る存在ですね。
曽明(富) / 今は職人さんとの繋がりをつけているところです。
五十嵐 / 継承ですね。職人さんとの関係値はいかがですか?
曽明(富) / 創業から92年になりますので、今まであった信頼というのを受け継いでいますので、その点では職人さんとコミュニケーションしやすいのはありますね。礎を作って頂いて助かっています。ただ、職人さん自身は少なくなっています。自治体とか組合とか色々協力をしていますが、時間も必要ですし大事にしていきたいですね。
現代生活にあった漆器を通して
若い人に漆器や産地の魅力を
伝えていきたい。
五十嵐 / 漆器産地としてのこれから、そして期待感や逆に課題など、考えていらっしゃることがあれば教えて頂けますか?
曽明(富)/ 全てが揃っている産地なので、まずは技術を伝承することでしょうか。その上で、ただ単にモノを作るというのではなく、自分たちの持っている技術でみなさんに使っていただける、喜んで頂けるモノづくりをと思います。技術力があるので産地としての未来はあると思っています。
曽明(晴)/ 現代の生活様式にあわせた漆器を通して、若い人に魅力を訴えていきたいという思いがあります。産地に興味を持っていただいて、産地に行ってみたいとか、住みたいとか思ってもらえるといいですね。そんな魅力を商品を通して伝えていけたらと思います。
五十嵐 / 曽明漆器さんは、エーデパ出店者のスイート皮工房さんともコラボレーションを実現されていらっしゃいますよね。最後にエーデパを立ち上げて3年になりますが、期待することがありましたらお願いします。
曽明(富)/ コラボレーションができたスイート皮工房さんは、エーデパでの交流がきっかけで、お声がけを頂きました。皮の浮き上がった部分に金で蒔絵ができないかというご相談でした。皮製品は自分自身がとても興味があったので、漆器の技術を活かすことができたのは、ありがたいと思っています。エーデパさんでは、今でもいろんな発信して頂いていますので、これからも若い人にどんどん地元のことを発信して頂ける事を期待しています。
・ 拭き漆のグレーブルー木製漆器キット
・KyutarouBLUE/KyutarouBLUE爽シリーズ
株式会社曽明漆器店
曽明富代さん・晴奈さん
株式会社曽明漆器店。創業大正12年創業。老舗漆器店の企画を母娘で担当。母 富代さんは代表取締役として商品企画・経営・経理も担当。十数年前に産地ではいち早くネット販売を開始。その後、娘の晴奈さんも家業の従事するようになり、商品企画の他、ウェブデザイン・サイト管理・パンフレットデザインを担当。母娘で祖父の名である久太郎を「漆器久太郎」ブランドとして確立。漆器や塗り物に加え、他工芸品とのコラボ―レーションや、クラウドファンディングなど新しい動きに積極的に取り組んでいる。