作家さんを訪ねて 株式会社国府印刷社 代表取締役社長 有定耕平さん
社員の声や提案を生かし、
印刷にこだわったモノづくりに挑戦。
コロナ禍で必要なモノは何だろう?
全社員で考えた、紙のマスクケース。
2020年からのコロナ禍。印刷業界も大きな打撃を受けました。そんな状況にあっても前進、挑戦しているのが国府印刷社です。コロナ禍の真っ只中、社員一丸となってオリジナルのマスクケースを開発し、注目を集めています。開発当時のことを、同社代表取締役社長の有定耕平さんが振り返ります。
「弊社は印刷会社、いわば印刷と紙のプロ。コロナ禍で売上が激減した当時、“何かしなければ! プロとして何ができるだろう? 今、必要なものとは?”を考え、全社員にアンケートを取りました。すると、食事中にマスクを一旦おいて置くマスクケース案が出てきました」
マスク生活が一般的になってきた頃の身近な問題。それを紙で実現しようと、すぐに動き出しました。それが2020年5月のことです。
「ちょうど翌月(7月)に福井商工会議所の新商品・新サービス合同プレス発表会があって、それに間に合わせようと。約1カ月間、全力で取り組みました」
売上激減は大打撃でしたが、見方を変えれば新商品にかける時間ができたということ。その結果、何度も試行錯誤を重ね、納得の商品を作り上げることに成功したのです。その名も【和ごころ】。ネーミングも、全社員からのアンケートで決まりました。
越前和紙や抗菌などのこだわりは、
海外にも通用、重宝される。
有定社長以下、全社員が納得して作り上げたマスクケース【和ごころ】には、いくつものこだわりがあります。
「素材は越前和紙。以前からオリジナル商品に使いたいと考えていたので、好機となりました。そして、丈夫で長持ち、形がしっかりキープできる合紙(厚紙を貼り合わせる)加工で、ケース内側には抗菌印刷を施しました。形状は、2つ折りと封筒の2タイプ。普段使いはもちろん、ギフトや企業のノベルティとしても最適です」
いくつものこだわりを盛り込んでいるとあって当然、使い捨てではなく繰り返し使えるエコな商品でもあります。
「約1カ月という厳しいスケジュールの中、社員の皆さんが頑張ってくれました。弊社では、その声や提案をよく聞き、生かしていくことを大切にしています。マスクケースも最初は5種類だけでしたが、社員主導でオリジナル色を含めて10種類に増加。中でも【星七宝 若草】が人気です」
発売以降、こだわりのアイテムとして注目を集め、多方面からの問い合わせや納品が相次ぎました。納品された中には、イギリスの日本大使館もあったとか。 コロナ禍の今、マスクは世界で必要不可欠なアイテム。マスクケース【和ごころ】のさらなる海外進出も期待できそうです。
社員からのアイデアを生かし、
印刷でできるモノづくりを楽しみたい。
創業から40年。さまざまな印刷や印刷物を手掛けてきた同社ですが、これまでマスクケースといった本格的かつオリジナルのモノづくりは少なかったとか。
「コロナ禍でネガティブになってしまうところでしたが、ポジティブに考えられるようになったのは、まさにマスクケース【和ごころ】のおかげです。全社員でアイデアを出し合い、考え、挑戦していくモノづくりは楽しくて、おもしろくて、仕事へのやりがいにも直結するのではないかと感じています」
社員の約6割が地元越前市在住であり、地元企業や地元で配布される印刷物も数多く手掛ける、まさに地元愛にあふれた同社。昨年、越前市内で開催されていたボルガライスラリーも同社の企画で、日本ボルガラー協会の協力のもと、ポスターや各店舗のボルガカードを製作し、人気となりました。
そして現在はマスクケースの発展形をはじめ、さまざまなモノづくりも思案中。そのための企画部も創設されました。企画部は各部署数名ずつで構成され、週2~3回の会議でさまざまなアイデアを持ち寄っているとか。その中から新たな新商品が生まれる日も近いのではないでしょうか。
「弊社商品の【動画で再甦(さいせい)】(紙からデジタル、動画への変換サービス)のような印刷以外の商品づくりをはじめ、今後は紙以外への印刷にも挑戦していくつもりです。企画力を含め、デザイン部門を持つ印刷会社だからこそできることはもっとあるはず! そうポジティブに考え、社員一丸となって印刷にこだわり、極めていきたいですね」
【和ごころ】の開発、試作期間は約1カ月でしたが、思いのほかスムーズに進みました。
有定社長自身も【和ごころ】を愛用。マスクを外して収納する動作は、とってもスムーズ。つまり、使いやすさは抜群!
【和ごころ】は、2つ折りと封筒の2タイプある。越前和紙が作り出す、色とりどりの模様も特徴の一つ。当然、記念品やノベルティ用の印刷にも対応可能
2020年9月から翌年2月末まで開催された【ボルガライスラリー】。各店舗で配布されたボルガカードは限定各100枚のレアアイテム。「コロナ禍、飲食店さんを応援したい!との気持ちで始まった自社企画です」と有定社長。コストも自社負担したそう。この企画好評を呼び第2弾を実施したいとの意気込み。
チラシやパンフレットで使用した写真などの素材から、動画を作成する同社のサービス【動画で再甦(さいせい)】。印刷物の制作者自身が動画も作成。「動画作成を含め、知識や技術向上、スキルアップのため、定期的に勉強会を行っています」(有定社長)
マスクケースを機に、部署を超えて編成された企画部。「入社2年目ですが、やってみたいと思い手を上げました。いろんなことに挑戦したいです」(左/制作部 小林由佳さん)と、「難しいこともありますが、企画会議での発言は楽しいし、さまざまな意見が聞けるのはおもしろいです」(中/総務部 坂下祐子さん)
デザインを手掛けるメンバーが数多く在籍。クライアントの要望に応じたさまざまなデザインがここで作られている
直線だけでなく、自由な形にもカットできる機器。印刷物の可能性がより広がる
【和ごころ】は、不快なニオイ成分を閉じ込める銀イオンを配合した「におわなインキ®」を採用。抗菌インキとしてSIAA(抗菌製品技術協議会)にも認可されています。
株式会社 国府印刷社 代表取締役社長
有定耕平さん
越前市生まれ。大学進学を機に上京。約3年間、東京での印刷会社勤務を経て15年前にUターン、国府印刷社に就職。一昨年前から現職。国府印刷社は創業以来、幅広い印刷物に加え、小ロット印刷や特殊印刷、短納期など柔軟に対応する地元印刷会社として広く知られている。東京オフィスもあり、企画部には東京のスタッフも参加している
越前和紙を使用した「抗菌」マスクケース
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