松原蝶製作有限会社 代表取締役社長 松原倫岳さん

松原蝶製作有限会社
代表取締役社長 松原倫岳さん

 “蝶”がアクセサリーに。蝶独特の色合いが用途をさらに広げる。

「廃材を何とかしなければ!」 姉弟の想いが廃材活用実現へ。

メガネフレームの生産地として世界トップシェアを誇る福井県鯖江市。同市に関連企業が数多く点在しています。その中の一つが『松原蝶製作有限会社です。社名にある“蝶”とは、鼻パットのこと同社は日本でも数少ない蝶専門製作所で、2代目社長が松原倫岳さんです。

蝶(鼻パット)は地味なパーツですが、かけ心地には重要不可欠な存在です。だから、誇りを持って製作しています。でもその一方で、10年ほど前から製作時に大量に出る廃材のことが気になるようになりました。この廃材を何とかできないか」と。

松原社長によれば、多い時には1カ月に約500kgが産業廃棄物として処理されていたといいます。経営者として毎月の処理代悩ましい問題です。解決策を考えていた同じ頃、長年一緒に仕事をしている実姉の別司聖子さんも同じことを思いつつ、まったく別の発想をしていました

「紫色の生地(廃材)を見た瞬間、かわいいなぁと。これを使って何か作れないかなと思ったんです」

思ったらすぐに「やりたい、やってみよう!」と行動に移した別司さん。最初こそ別司さんからいろいろと相談を受けていたという松原社長ですが、そこは姉弟。早い段階で廃材活用については、別司さんに任せるようになったと言います。

 

SNS発信を地道に続けることで、蝶廃材の存在確実に広がっている。

廃材といっても、材料は色鮮やかなセルロイドやアセテートです。その色合いに魅かれて手に取ってくれる人はいるはず!」と、別司さんは色とりどりの鼻パットの展示会出展を決めました。

「意気込んで出展したものの想像以上に関心は薄く、結果はボロボロでした。でも、めげずに少しずつ発信していたら、約3年後に“コレ、かわいいんじゃない!”と声をかけてくだる方がいて、その企業の目玉商品にしてくださったんです

そこから少しずつ色鮮やかな鼻パットが広がり始め、5年ほど前からはインスタグラムも活用。展示会でも手に取るお客さんが増えてきました。今では鼻パット以外にも、アクセサリーやリング、髪留めなどの雑貨類も手掛けるようになりました。

「“自分が使うなら、購入するなら”を考えながら作っているので、ある意味、自己満足かもしれません。でも、作るのは楽しいんですよね。そんな思いあって、以前、ワークショップを開催してみました。すると、子ども達がキラキラした目をして真剣に作っているんです。その様子を見て、こんな風に楽しんで作る機会をもっと提供していきたいなぁと実感しました」

別司さんの熱い想いは、松原社長の娘である長谷川亜美さんにも伝わり、今では別司さんと長谷川さんの2人がメインとなり、いろいろな企画やアイデアが考案されています。そして、いつでも見学やワークショップ、イベントができるようにと、工場内直営店舗の開業も予定されています。

普段使いできるアイテムを作って提案し、メガネ産業にも貢献したい

長谷川さんが父の仕事を手伝うようになったのは、出産後のこと。「子どもの頃は、“メガネの仕事”というだけで、何を作っているのかも知りませんでした。でも、大人になって“蝶”の存在を知り、自営の大変さと貴重さを実感しました」

子育てをしながら、繁忙期などに手伝いに入るようになって数年後。別司さんが企画したワークショップを見たのを機に、廃材活用に興味を持つようになったようです。

アクセサリーを作りたい!思って自分でデザインしたり、ネットや雑誌などデザイン参考にしてアレンジしてみたり…。でも、いつも“これでいいのかなぁ”とネガティブになってしまうのが私の欠点。その一方で、アセテートの美しさ、素晴らしさをもっと広めていきたいし、伝えていきたいとも思っていて。だから、ネガティブな気持ちを少しずつ払しょくしながら、勇気を出して皆さんに見ていただこうと、頑張って製作しているところです

メガネの素材というと、お土産や贈り物に活用されることも多いが、長谷川さん曰く、「普段使いできるアイテムを作り、提案していきたい。普段使いだから、ワークショップでいろんなアイテムを作る機会を作りたいんです」。まさに、別司さんと同じ思いなのです。

メガネの蝶が同社で形を変え、いろんな人に、場所に、空間に飛んでいき、気持ちや暮らしを美しく彩ってくれそうです。

 

松原蝶製作有限会社
代表取締役社長 松原倫岳さん

鯖江市出身。蝶製作に情熱を傾ける先代(父親)を見て育ち、自然と家業を継ぐ気持ちになった。18歳から仕事を始めたが、「本当の意味での仕事への覚悟を決めたのは23歳の頃。良い仕事に巡り合うことで、お客様の期待にもっと忠実に応えたいと思いました」。

 

 別司聖子さん、長谷川亜美さん、松原倫岳社長。

「伯母さんの聖子さんとは、この仕事を機に良く話すようになりました。お互いに異なる感を刺激し合って、良いものを作っていきたいですね」(長谷川さん)

 

鼻パットというと透明(クリア)が一般的。でも、色鮮やかな蝶に付け替えるだけで、メガネの印象はもちろん、かける人の印象もガラリと変えてくれる。

 

廃材を活用したアクセサリー。「廃材もそのまま使うのではなく、角を削って滑らかにしたり、いろいろな形にアレンジしてみたり…。パーツの種類が多いほうが作る側も楽しいですよね」(別司さん) 現在の製作アイテムは、髪留めやポニーフック、リング、ネックレス、ブレスレットなどのアクセサリーが主流。今後は、フォトフレームやモービルなど、インテリア関連アイテムも考えていく予定。

 

パーツの種類や色が多いほど、使う用途やアイデアは広がっていくはず。「子どもの自由研究にどうかと。廃材を使って作りながら、メガネ産業のこともさらに身近に感じてもらえると思っています」(長谷川さん)

松原蝶製作の「鼻パット」はこちらから

 

 

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