作家さんをたずねて~ガラス工房KEiS庵 竹田さん

OBAMA ガラスを確立して
OBAMA ブルーをもっと研究して
ガラスの魅力をもっと広めたい。

 

「南の島へ移住したい」。

後悔しない生き方が生んだOBAMA ガラス。

小浜市でOBAMA ガラスを創り出した「KEiS庵」庵主 竹田恵子さん。もともと、ガラス作家なろうと思ったわけではなく、前職を退職後「後悔しない生き方をしたい」と、かねてから夢だった石垣島への移住がきっかけでした。琉球ガラスを作る現場を見て「衝撃を受けました」と、当時勤務していたシーサー陶工房を退職。何軒も断れながらも琉球ガラスの工房へ弟子入りし、3年間の修行を経て帰福しました。

ただ沖縄の地で作ったものが、琉球ガラス。小浜では琉球ガラスと名乗ることができず、

自分は何者か、自分の色など、かなり悩みましたね」

 小浜市にガラス文化はなくOBAMA ガラス「KEiS庵 」として出発、「溶解炉づくりから、とにかく一人であたふたしながら作り続けてきました」と竹田さん。作家活動をしながら、小浜らしさとは、自分らしさとは、を模索し続けた結果、「地域のためになるものを作りたい」と、オール小浜の材料を使用した小浜ならではの「OBAMA ブルー」というガラス作りにたどり着きます。

 

小浜の海岸の砂、特産の牡蠣殻、よっぱらい鯖の骨
地のものでガラスを作る、稀有な「OBAMAブルー」。

ガラスの主な材料は「珪砂」「ソーダ灰」「石灰」。竹田さんは「珪砂=小浜の砂」、「石灰=牡蠣殻、よっぱらい鯖の骨」に骨格を置き換えて、小浜ならではの「色」と「素材」のガラス=「OBAMAブルー」を2019年から試作と研究を続けてきました。福井県や関係機関に許可を取りながら、小浜の砂浜と牡蠣殻を100通り以上組み合わせ。溶かしては発色を確認という、溶解実験を地道に繰り返し、ようやく竹田さんが思う「小浜の海の色に近づいてきました」と話します。

現在、試作品を作り耐久性など確認しながら製品化を進める段階まで来ています。ガラスに地の物を使いアートと融合させた、地元ならではのガラス文化。小浜の自然が生み出した美しい「OBAMAブルー」。「器を使う人たちの笑顔や、小浜の観光に少しでも役に立てたら嬉しい」と竹田さんの夢は膨らみます。

 

異ジャンルの作家さんとも交流し、
視野を広げていきたい。

一方で「ガラスは灯油や電気をものすごく使用するので、あまり環境にいいとは思えなくて、罪滅ぼしというか、廃棄ビンを砕いて再加熱しカラフルな色で焼き付けた破片を作ってワークショップに使っています。ガラスは再生可能なことも知ってもらいたくて」と積極的にワークショップを展開。ショップ併設のワークショップコーナーでは、キャンドルホルダー、ドアプレート、フォトフレームなどいろんな体験が楽しめます。

また、地元の作家さんとグループ展を開催したり、異ジャンルの作家さんとも積極的に交流をされています。「全く違うジャンルの作家さんだからできること、コラボする事で見える違う世界があります。いろんな方と交流して、常に広い視野をもっていたいですね」。2021年10月には、合同展覧会で出会った金沢在住(小浜出身)の作家さんの油絵とコラボ、フクイ工芸社(福井市)での展覧会にもコラボ作品を出品されるそうです。

今後も、OBAMA ガラスを確立するためにOBAMA ブルーを更に深く研究して、ガラスの魅力を皆さんに伝えていけたら、と思っています」小浜の大地の恵みを受けて「OBAMAガラス」という、小浜にしかない新しい文化をこれからも創り続けます。

 
心からあふれる言霊であったり魯山人など偉人の言葉であったり、工房の壁には様々な「ことば」を描かれている。このことばを描くためにオープン当初からフラットに設計したそうです。学生時代から趣味で嗜んでいた書は師範の資格を持つ

 
グラスに光を通すと美しい揺らめきの影ができる。これは琉球ガラスの技術だとか

 
「商品は、使う人が主役。だから重さ、色や形など幅を持たせたい」と常に使い手の気持ちに沿った商品づくりを心掛けているそう

 
色とりどりのガラスの破片。ワークショップに使用するガラスは、不要になったガラス瓶を、1本1本丁寧に手洗いし砕いて、焼成、角などを落とし手間暇かけて作られている

 
ショップには、器を中心としてアクセサリーや花瓶、箸置きなど様々なアイテムが並ぶ。



陶シーサー。「ガハハ」と笑っているシーサーは竹田さんが開発したという


今開発中のOBAMAブルーの試作。深い蒼が印象的だ

 
工房オープン時からショップスタッフとして強い味方であるお母さんとお姉さん。「本当に感謝ですね」と竹田さん。工房のサポートや販路開拓、納品、事務処理、ワークショップの受付など、運営にはなくてはならない存在

 
電気釜での作業。

 
賑やかで明るい色彩のショップ。



KEiS庵 
庵主 竹田恵子さん

小浜市生まれ。

小浜市役所勤務を経て、沖縄県石垣島に移住。シーサー陶工房で働いている時に琉球ガラスに出会い、吹きガラスの道へ。沖縄県読谷村吹きガラス工房 彩工房 佐久間正二氏に師事。

2008年小浜市でガラス工房「OBAMA glass KEiS庵」をオープン。ガラス工芸の理解と普及が認められ、2020年11月小浜市文化奨励賞受賞

IGARASHIIKUKO