神久商店 代表取締役 神谷直則さん
神久商店 代表取締役 神谷直則さん
福井に伝わる醤油麹漬け文化をベースに、
美味しい新商品を作っていきたい。
40年前の美味しさを再現。福井県産にこだわった商品が完成。
全国でその味のファンが急増中の神久商店の醤油麹漬け。麹のほんのりとした甘さと食材の旨味が一体化、焼いてもしっとりとした深い味わいは、自宅用はもちろん贈答品としても定評があります。実は醤油麹漬けは新しい味ではなく、福井県で昔から伝わる伝統の味なのです。
「あれは40年ほど前のこと。母の実家で食べさせてもらった義祖母の作った大根とにしんの麹漬けが美味しくて、特に焼いたものは絶品! 今もその味を覚えています。それを商品化できないかと思い、2013年に試行錯誤したのが醤油麹漬けの始まりです」
そう回顧するのは同社代表取締役の神谷直則さんです。最初は身欠きにしんを使うも、商品化するには硬すぎてソフトにしんに変更。そして生麹のまま樽漬けすることで、えぐみや渋みを解消させるなど、食材や製法をいろいろと模索しました。
「福井県産の豚肉や鶏肉、サーモン、甘えびなどの食材に加え、福井県産コシヒカリの生麹、福井県産丸大豆で作った醤油など、とにかく県産にこだわった商品“プチ贅沢シリーズ”ととして販売を始めました。2013年のことです」
国内外の“旨いもの”を厳選し、極旨シリーズとして販売。全国区の人気商品へ。
醤油麹漬けの独特の味わいは、新聞やテレビなどで紹介されたこともあり注目を集め、人気を博していく一方で、新しい県産食材探しに難航していたそうです。
「県産にこだわりすぎているのかなぁと一度立ち止まりました。そして、“旨いモノを作ろう”と思い直し、方向転換をしたのです。例えば、鯖は脂ののったノルウェー産にしてみるとか。その他にも美味しいと言われる素材をいくつも試しました」
試した食材は30品にものぼり、商品化を断念したものも多くかったとか。中でも意外だったのは、美味とされているふぐと牛肉。特に牛肉は鉄分の多さが味に反映されてしまい、さらに焼き上がりも驚くほど赤くなり、ほどよい焼き具合がわかりにくく、見栄えも良くなかったのだとか。
「濃厚な生ガキ(能登産)やさばフィレ(ノルウェー産)、ニシン(ロシア産)、サーモン(チリ産)など本当に美味しい素材を10品厳選して、2018年から“極旨シリーズ”として発売しました。最強の菌と言われる麹は、食材の旨味を引き出すすごい力を持っているんだと改めて実感しています」
醤油麹漬けはすべて手作り。しかも、食材を漬け込む醤油麹の配合や日数はそれぞれに異なるので、日々の作業にも時間がかかります。奥様の康子さんと娘さんの直美さんも一緒に漬け込み作業を行っています。
「最初の頃は味に自信がありませんでしたが、今ではどれも美味しいと自信をもっておすすめしています」(康子さん)
「大根とにしんの昔ながらの麹漬けが大好きな私がおススメするのは、サーモンと生ガキ。ぜひ、食べてみていただきたいです」(直美さん)
伝統の味を若い人にも伝えるために、新しい食材、新しい味を追求していく。
10品の“極旨シリーズ”の中でも一番人気は、日本海産するめいかです。柔らかくて甘みがある味はご飯のおかずはもちろん、酒の肴にもぴったり! 幅広い年齢層でリピーターが多いのも特徴です。
「どれも独特で、万人受けする味ではありませんが、それで良いと思っています。それよりもさらに美味しく食べていただける提案をしていきたいし、新しい食材による新商品開発もしていきたい。醤油麹漬けは年配の人には馴染みですが、若い人には馴染みが薄い味。でも、“初めて食べる味で驚いた、美味しい!”と言ってくださると、次世代に伝統の味を伝えられたようで嬉しいですね」
現在、ネット販売以外に、有名デパートの“こだわり品コーナー”などにも置かれ、人気は全国区になりつつありそうです。
さて、気になる次なる新商品はというと?
「ぐじや赤魚、はたはた、豚の肩ロースは醤油麹漬けと相性抜群。良い味になると思います。もちろん、他の食材もいろいろと試しています。今後にご期待ください」
神谷社長の美味しさへの追求は目下、継続中。あっと驚くような新商品に出合えるのが楽しみですね。
「極旨シリーズの中で好きなのはさばフィレです。甘さが独特なところが気に入っています」と神谷さん。
醤油麹漬けはサッと焼くだけ、簡単にできるのも人気の秘密。奥深い味もさることながら、実は匂いも麹独特で食欲をそそる。写真は極旨シリーズの国内鶏はらみで、野菜と炒めるのもおすすめ。
現在、極旨シリーズは生ガキ、さばフィレ、にしん、カラスガレイ、国内鶏せせり、国内鶏はらみ、日本海産するめいか、サーモン、豚トロ、天然帆立貝柱の10品。
醤油麹に漬け込んで10日ほど経ったサーモン。もう少し漬けて完成となる。
左から奥様の康子さん、神谷社長、娘の直美さん。
神久商店 代表取締役
神谷直則さん
越前市生まれ。社名は、祖父の神谷久吉さんから命名、現在3代目。創業は1955年、お菓子や乳製品の卸売業がメインで、2013年頃から醤油麹漬け商品の製造販売を開始。現在、午前中に卸売業の配達、午後からは醤油麹漬け商品の製造や発送にあたる。製造には社長をはじめ、奥様の康子さん、娘の直美さんが携わっている。