花虎窯 武曽健一さん

興味が赴くままに作った器を、
好きなように使ってもらえるのが嬉しい。

 

楽しさや面白さ、可能性のあること、
興味のあることに集中する性格。

花虎窯の武曽健一さんが陶芸家になろうと決めたのは、29歳の頃でした。

「モノ作りは幼少時から好き。でも、就職時期がインターネット創世期で、何ができるんだろう、面白そう、やってみたい!という興味がまさってWEB関連企業へ。それにインターネットを知っていれば、今後どこででも仕事ができると思っていました」

 20代を大阪でWEB関連業務に捧げる一方、好きだったモノづくりへ思いも覚醒。27歳で地元福井に戻った時、どんな伝統工芸に取り組むか迷ったといいます。

「越前打刃物に越前和紙、そして越前焼。どれも素晴らしいモノづくり現場を見学しましたが、最初から最後まで一人で作るのが向いている性格なので越前焼を選びました。未経験でゼロからのスタートでしたが、不思議と不安はなかった。就職時と同じように興味のほうが勝りました。でも、始めてしばらくすると、これでいいのかなぁと不安になってくる(笑)」

 窯業試験場での研修と窯元で勤務を経ることで、その不安は手仕事への面白さにつながり34歳で独立。現在、小さな花がかわいい「印花シリーズ」の器が好評です。

 

福井をイメージしたカラー展開と
土肌を生かしたかわいい印花シリーズ。

「最初は白化粧を使った粉引のシンプルな作風や象嵌や花三島などを作っていました。そこから現在の印花(いんか)シリーズが生まれました。印花で自分はパターン化した模様が好きなんだと改めて思いました。でも、一つずつ印花を押す作業は本当に大変(マグカップ1個に約200個の印花/編集部調べ)。そして、仕事で疲れたら外の畑へ。季節毎にいろいろな作物を育てて、おいしくいただく。仕事とのバランスをとるため、私にとっては必要なことなんです」

印花シリーズの第一印象は「かわいい」。女性はもちろん、意外にも男性ファンも多いようで、その理由がカラー展開にあると武曽さんは分析します。

「白、黄、青、錆、飴、灰など多種類で、渋い色系だからかもしれません。ちなみに私の好きな色は白。福井の雪のイメージです。他は、黄は大地、青は海…どれも福井にあるものばかりです」

 また、武曽さんの器の特徴は軽いこと。“焼物=重い”のイメージを覆してくれる軽さですが、決して軽すぎない。それが使いやすさにもなっています。

「今は赤土ですが、以前、磁器土も試してみたことがあります。磁器土は扱いにくいのですが、キレイに仕上がりすぎる。キレイすぎるのではなく、土っぽさや土肌を生かしたいと思い、赤土に落ち着きました。使い方は人それぞれですので、好きなように使っていただけるのが一番嬉しいですね」

 

 
新作に向けて、もっと考えて試作したい。
そして、異業種とのコラボの期待も大!

 大好きなモノづくり。作陶中と同じくらい楽しみなのが、新品を開発する期間だと武曽さん。

「こんなこと、あんなこと、やってみるとどうなるのかなぁと考えたり、試作したり、そんな時間は本当に楽しいし面白いですね」

 印花シリーズが一旦落ち着いた頃に生まれたのが、絞手(しぼりで)シリーズです。滲んだ模様が美しく、懐かしさも感じられます。

「印花がマット(艶無し)でカジュアルな雰囲気なら、その真逆。艶感があって、古いものも好きなので、ベトナムの安南手やイスラム陶器の雰囲気を目指して自分らしく再構築してみました。熟考、試作段階での不安は一切なし! とにかく興味のあることに集中して、絞手が出来あがりました」

 印花と絞手。まったく違う作風ですが、どちらも武曽さんのセンスと技術、興味の賜物。これからの新作もますます楽しみです。

「これからも新作を作っていきたいですし、そのためにもいろんな場所に行きたい。今はコロナ禍でイベント開催も難しいですが、展示会やイベント、異業種とのコラボレーションは面白そうですよね。イベントや交流への参加が、作品に反映できればいいですね」

 

 

粘土製の印花は大人の小指ほどの大きさで、一つひとつ微妙に模様が異なる。土が柔らかいうちにひたすら印花を押していく…。その結果、指には押しダコが出来るまでに。

 

 

自宅前にある小さな畑では、イチゴやいちじく、ブルーベリー、トマト、オクラなど、“食べられる”ものを栽培中。「収穫できるのが楽しいし、嬉しいですよね」 トマトやブルーベリーが盛られた器は自宅用。「自宅用は、失敗作なんです(笑)」

 

 

好きな音楽はソウルなどのブラックミュージックで、日々の生活に欠かせない存在。「越前打刃物も興味があったのですが、音が大きすぎて仕事中に音楽が聴けない環境なので断念しました」

 

 

 

花虎窯

武曽健一さん

丸岡町生まれ。大学卒業後、WEB関連の仕事を経て2007年に帰福。作陶に興味を持ち、2008年に窯業試験場で学び、2009年から越前焼窯元(踏青舎)に勤務。2012年に独立。趣味は実のなる作物栽培と音楽。自宅前では季節毎に様々な実のなるものを栽培、害獣対策にも余念がない。

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