「匠」工房 小柳箪笥さん

顔の見える「ものづくり」
ものに込めた思いを伝えたい。

越前箪笥「匠」工房 小柳箪笥 四代目 小柳範和

a.department storeには、越前焼、和紙など、ものづくりに想いをもった作家さん、職人さんが参加してくださっています。越前市で100年続く小柳箪笥四代目の小柳範和さんを訪ねました。


小柳範和

小柳さんは現在四代目。稼業を継ぐと決めたのは中学時代。高校は、建築科を選んだそうです。「先代である親父が婚礼家具だけでなく、新しくオーダーメイド受注も始めていて、建築現場への出入りが増えたんですね。もう少し広い角度から学びたいと思って」。敷かれたレールが見えてきた小柳さんでしたが、高校を卒業後、コミュニケーション力の不足もあって大きな挫折を味わいました。そんなときターニングポイントになったのは、「世間を見てこい」という先代の言葉。その言葉を受けて名古屋へ修行に。「背中を押してくれたのは大きかったですね。世の中には色々な人がいて、考え方があって。多様性が生まれる面白さとコミュニケーション、それを解決するチャレンジの大切さ学びました」。また、地元越前市の素晴らしさを俯瞰から感じられたのも大きかったといいます。

型(基本)がなければ、「型破り」にはなれない。

小柳さんが大切にしている言葉に「守破離(しゅはり)」があります。歌舞伎に使われている言葉ですが職人の世界にも通じると話します。「『守』は、型を守る基本。『破』はその型を破り自分らしさを作る。『離』は親方から離れる。親方をリスペクトし、自分らしさを作り離れていくということです。型がなくては、型破りはできないんです」。小柳さんは言葉通り、現場を数多く経験して技術を磨き、「家具手加工1級技能士」、「職業訓練木工科指導員免許」などを取得。修行を重ねていく中で歴史や文化にも触れ、箪笥が作られている背景を伝えていくこと、作り手が見えるものづくりの重要性を感じていきます。「越前市に神社・仏閣が多いのは、歴史もありそれを支える職人さんが多くいたということ。箪笥、打刃物、越前焼、和紙、漆器、すべて「暮らし」に根づいたもの。そしてこの地域(越前市・越前町)で連綿と作られてきました。昔の人の物づくりは丁寧で永く使えるものが多いんです。ものづくりの発祥の歴史があるからこそ、ここ越前市で作る意味があり、作り続けたいと思います。その歴史がどう素晴らしいのか、そして、どういう人間がどんな思いで作っているのか、顔の見えるものづくりをしたいですね」

言葉を重ねて伝える日々。

それを広く伝えたいと、工房を見学ができるようにリフォーム。いろんなイベントなどに積極的に参加をして「言葉を重ねて、伝えられるようになってきた」と話します。そして、業界を超えて越前焼や和紙など作家さんなど横のつながりが生まれたそうです。「お互い何かやりたいと思ったときに『できる』を前提に相談できるのがいいですね」。小柳さんの工房には、交流のある越前焼や和紙など作家さんの商品も置かれています。

そして、型(基本)を超え、製スピーカー・木の名刺入れだけではなく木に関するインテリアや雑貨などを制作する新ブランド「kicoru」も立ち上げ。キコルは「木にこだわる」から生まれたブランドです。縁起柄の木製コースーターは、そのスタイリッシュなデザインから注目を浴びています。今後は「職人の生まれる街にしたい」と動き始めるなど小柳さんの夢は続きます。

「a.department storeでは、出店者同士で交流を通じてその仲間たちで、木工、ろくろ、和紙漉きとか、ゆっくりと福井に滞在してもらいながら、いろんな体験ができるツアーをやってみたいですね」と期待を寄せています。

今、工房には20代のスタッフ二人が働いています。小柳さんがイベントに参加していた際その商品をみて働きたいと連絡があったそう。

小柳範和

http://oyanagi-tansu.jp/

1974年、創業100年の老舗『小柳箪笥』の四代目。19歳の頃より木工職人としての修業を始め、30歳で「家具手加工1級技能士」、翌年に「職業訓練木工科指導員免許」を取得。代々、語り継がれてきた伝統と指物技術を今も尚継承し続けながらも、木材を用いた型にはまらないクリエイティブなモノづくりを追求するべく日々、精進中。昨今では、『木』と『漆』の親和性と奥深さに改めて魅了され、杢目を活かす漆のさらなる可能性を探求している。