不完全さを受け入れ、新品をしのぐ器をつくる〜金継ぎの匠〜

不完全さを受け入れ、新品をしのぐ器をつくる〜金継ぎの匠〜

在るがままを信じて醸す「永平寺白龍」 読む 不完全さを受け入れ、新品をしのぐ器をつくる〜金継ぎの匠〜 1 分

「ものづくりで心を豊かに」をモットーに、福井県鯖江市で「金継ぎ」や「うすくちうるし®」の製造販売等、漆業を営んでいます「うるしの駒や」の薮下です。老舗の製造業が軒を連ねる鯖江市や越前市ですが、私は26年間勤めた地酒の酒蔵を辞め、2022年に脱サラ開業いたしました。新参者ならではの必死さで、小さな作業部屋のある上野池之端と、ものづくりのまちを右往左往いたしています。
さて、「割れた大切な器を、美しく甦らせたい」そうした想いから生まれたのが、「金継ぎ」です。その歴史は、戦国時代の茶の湯の文化にまで遡り、以来、欠けや割れ、ヒビなどを金継ぎした器は日本文化の中で完品同様、もしくはそれ以上の価値を宿すと考えられるようになりました。不完全さを受け入れ、新品をしのぐ器をつくる。まるでSDGsを象徴するような我が国の文化として世界的にも認められており、「KINTSUGI」はオックスフォード英語辞典にも登録されています。





その「金継ぎ」ですが、多くの方が金で接着すると誤解されているようです。実際には割れた器を漆で接着し、接合部分に金粉を蒔いて仕上げます。「え~、樹液で器がくっつくの?」と思われるでしょうが、漆は遥か縄文時代から用いられ、接着剤や保護剤、加飾の材料として身近なものでした。福井県の鳥浜貝塚からは漆塗りの木製櫛が発掘され、実際に約6,000年の時を超えて姿を保つほどに堅牢なことを証明してくれます。
皆さん、漆って凄いのです。そして、もともと我々の生活と共にあったのです。しかし、今は残念ながら、本漆が施された仕事に出会う機会が減ってきたように思います。私は、「金継ぎ」や、私が作っている飲み口が厚さ約1㎜の漆塗りの木製食器「うすくちうるし」を通して、自然素材の漆がもつ不思議な魅力を伝えていきたいと思っています。しっとりとした独特の質感、軽くて丈夫、自然の抗菌作用、異素材との優れた接着相性などの機能面はもちろん、「漆が乾く」と言われるくせに、固まる際には空気中の水分を取り込む独特の硬化メカニズムなど、その魅力は尽きません。





図らずも鯖江市は古くからの漆器産地であり、越前市は日本全国を飛び回った漆掻き職人の故郷でもあります。漆歴はまだ5年未満のほぼ素人ですが、「素人だからこそできる何かがきっとある!」と信じ、少しはサラリーマン経験を活かした「脱サラ改め活サラ金継ぎおじさん(商標申請検討中?)」として頑張っていきたいと思います。是非とも、a.department storeでの「うすくちうるし」のお買い上げをお待ちしております(笑)




今回の匠は。。

薮下喜行(やぶしたよしゆき)さん
うるしの駒や代表。金継ぎ師。

1973年福井県鯖江市生まれ。信州大学人文学部卒業後、1996年に黒龍酒造株式会社に入社。酒造りに従事した後、企画部の創設、「九頭龍」「無二」ブランドの立ち上げなどを担当する。経営企画部長、企画営業部長を経て退社。越前漆器の蒔絵の伝統工芸士である駒本長信氏に出会い、天然素材である漆の力に魅了され師事、2022年に金継ぎを主な業務とする「うるしの駒や」を創業する。継未金継ぎ塾講師。2021年より福井県立大学大学院経済・経営学研究科博士課程に在学中。経営学修士。酒造技能士2級。


うすくちうるし(90ml)


うすくちうるし(120ml外黒染)

うすくちうるし(170ml)

うすくちうるし平杯 干支蒔絵