みなさま、こんにちは。
今回、私が旅したのは、富山県・五箇山の一つ、利賀村です。
実は利賀村へは、これまで何度も訪れる計画を立ててきました。しかし、台風に重なったり、大雪で山道を進めなかったりと、そのたびに予定を変更せざるを得ませんでした。ようやく念願が叶い、この地を訪れることができました。
利賀村は、富山市内から車でおよそ1時間。標高1,000メートル級の山々に囲まれた、「天空の秘境」とも呼ばれる集落です。登録人口は約400人ですが、実際に暮らしている方はさらに少ないそうです。
今回この地を訪れた目的は、a.department storeでも人気の商品「清流素麺」が、この利賀村で作られているからです。
約50年前、利賀村の新たな産業として生まれた手延べ素麺。澄みきった水と澄んだ空気という、この土地ならではの自然の恵みを生かしながら作られています。当時30〜40代だった村の方々が、今もなお現役で一本一本丁寧に手で延ばし、素麺づくりを続けています。80歳になっても元気に働いていらっしゃると聞き、その姿にも大きな感動を覚えました。
空気も水も澄み渡る秘境への期待を胸に、新高岡駅へ降り立ちました。そこで担当の中川さんに迎えていただき、いよいよ利賀村へ向かいます。
黒い屋根瓦が印象的な高岡の街並みを抜けると、車は山道へ。くねくねと続く細い道を30分以上かけて、少しずつ標高を上げていきます。窓の外には青々とした山々が広がり、その景色に心を奪われながら進んでいたのですが、ふと隣を見ると、弊社スタッフはすっかり車酔いに…。それほど山深い道のりだったのです。
それでも山道を登り続けると、突然視界が開け、一つの集落が姿を現しました。それが利賀村でした。


信号はたった一つ。その信号も、この地で育つ子どもたちが交通ルールを学ぶために設置されているそうです。コンビニはもちろん、飲食店や商店もありません。
そんな何もないように見える村だからこそ、豊かな自然と、人が人らしく暮らす時間が今も息づいていました。
澄みきった空気を胸いっぱいに吸い込み、耳を澄ませば川のせせらぎと鳥の声だけが聞こえてきます。どこまでもまっすぐに伸びる木々、風に揺れる鮮やかな緑の葉、そして透き通る水。目に映るものすべてが、いつも見ている景色よりも一段と鮮やかで、まるで自然そのものが輝いているようでした。「天空の秘境」と呼ばれる理由を、私はこの景色を見て初めて実感しました。
この豊かな自然こそが、「清流素麺」の何よりのごちそうです。



仕込みに使われるのは、この地を流れる清らかな水。標高の高い土地ならではの昼夜の寒暖差、乾いた澄んだ空気、そして長年受け継がれてきた職人の手仕事。そのどれが欠けても、この素麺は生まれません。
一本一本を手で延ばしていく工程は、決して効率的とはいえません。しかし、その手間を惜しまないからこそ、細く美しく、それでいてしっかりとしたコシが生まれるのです。
沸騰したお湯にそっと入れると、麺は驚くほど美しく、まっすぐにほどけていきます。茹で上がった麺は透明感をまとい、つややかに輝きます。
ひと口すすれば、まず感じるのは凛としたのどごし。そして噛むほどに、小麦のやさしい甘みが静かに広がります。決して派手ではありません。それなのに、もう一口、もう一口と箸が止まらなくなる。そんな不思議な魅力があります。
「おいしい素麺」ではなく、「この土地だからこそ生まれる素麺」。


利賀村の澄んだ空気、清らかな水、そして長年受け継がれてきた人の手仕事まで、一緒に味わっているような一杯でした。
この素麺を食べるたびに、私はきっと、あの山道を越えた先に広がっていた静かな利賀村の景色を思い出すのだと思います。
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五十嵐郁子
1975年生。東京在住。エーデパディレクター。五十嵐羅紗店お姉(おあね)。福井県越前市生まれ。日本女子大学卒。大学生の2人の娘の母。東京福井県人会理事。福井市応援隊サポーター。
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