福井県若狭町。
三方五湖の湖畔には、春になると梅の花が咲き、初夏には実りの季節を迎えます。

私にとって梅は、幼い頃から当たり前にそこにある存在でした。しかし、大人になり地域の梅産業に携わるようになってから、その風景が決して当たり前ではないことを知りました。生産者の高齢化や後継者不足、消費者の嗜好の変化。地域の梅産業は多くの課題を抱えています。
私は長年、福井梅の振興事業に携わってきました。どうすれば福井梅の価値を高められるのか。どうすれば生産者が希望を持てる産業になるのか。
その答えを探し続ける中で生まれたのが、無糖梅酒「BENICHU」です。



当時、販売会で試飲を進めると、「梅酒は甘いから苦手」という声をよく耳にしました。それならば、梅本来の魅力をそのまま伝える梅酒を造れないだろうか。そう考え、砂糖を使わず、梅とアルコールだけで仕上げる無糖梅酒の開発に挑戦しました。
完成までには多くの試行錯誤がありましたが、今ではBENICHUが若狭町を代表する商品の一つとして育ってくれたことを嬉しく思っています。
私が商品づくりで大切にしているのは、「福井らしさ」です。原料となる紅映梅。若狭町の名水「瓜割の水」。
そして福井の風土や文化。地域にある素材や人とのご縁を結びつけながら、新しい価値を生み出したいと考えています。
2026年には、その想いを形にした梅酒「二九一」が、フランスで開催されたフェミナリーズ世界ワインコンクールで、日本リキュール部門の最高評価「TOP OF THE BEST」を受賞しました。
二九一という名前は、福井県の数字「291」が由来です。原料だけでなく、熟成に使用する越前焼の壺まで福井にこだわりました。
受賞は大きな喜びでしたが、それ以上に感じたのは、人とのつながりの大切さです。
梅を育てる生産者の皆さん。
越前焼の職人の皆さん。
商品デザインに携わる皆さん。
販売を支えてくださる皆さん。
多くの方々とのご縁があって、初めて一つの商品が完成します。
私は職人として一つの技術を極めた人間ではありません。むしろ、地域にある魅力をつなぎ合わせ、新しい価値として世の中に届ける役割だと思っています。
福井にはまだまだ素晴らしい素材や技術があります。
これからも梅を通じて福井の魅力を発信し、地域の産業に少しでも貢献できる存在でありたいと思います。
その先に、福井の梅に関わる人たちの笑顔が増えていけば、これほど嬉しいことはありません。
今回の匠は…
若狭三方ビバレッジ株式会社
COO:梅酒事業統括責任者/ブランドディレクター
新屋 明(しんや あきら)さん

【プロフィール】
1970年 福井県若狭町生まれ。
2002年 若狭町3セクの株式会社エコファームみかたへ入社。2012年に代表取締役に就任。
2014年 無糖梅酒「BENICHU(ベニチュー)」を発売。国内外のコンクールで高い評価を受ける。
2023年に若狭三方ビバレッジ株式会社へ社名変更。2024年M&A民営化。
2026年、現在、福井の素材や文化を活かしたものづくりを通じて、地域産業の活性化と福井の魅力発信に努めている。















